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スマート治療室「SCOT」、その完成形が動きだす

第4次医療革命「Medicine 4.0」構想、東京女子医大で臨床研究開始


手術室をあたかも1つの医療機器として機能させるスマート治療室「SCOT」(Smart Cyber Operating Theater)――。その最上位モデルが東京女子医科大学病院に設置され、臨床研究が始まった。

 このプロジェクトは、IoTやAIを活用してさまざまな社会問題を解決する第4次産業革命になぞらえ、第4次医療革命「Medicine 4.0」と提唱し推進してきたもの。構想の完成形となる最上位モデルが、いよいよ事業化に向けて動きだした格好だ。

 プロジェクトを主導してきた東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 教授の村垣善浩氏は2019年4月に開催した記者会見で、米国のアポロ計画に当たる壮大な挑戦とと目標に例え、次のように展望した。「SCOTのムーンショットは、1病院1SCOTが最終目標だ。ロボット化した国産の治療技術を実装し、自動車に次ぐ輸出の切り札として治療室を産業化していく」。

手術の最終局面でAIが3つ程度のオプションを提示


 スマート治療室「SCOT」は、術中画像診断装置(オープンMRIなど)を核に、生体情報モニターや静脈注射を行うシリンジポンプ、電気メスなど手術に必要な機器をパッケージ化。各機器の情報を統合制御し、AIやロボットを活用して治療の安全性と効果の向上を目指すもの。日本医療研究開発機構(AMED)による支援の下、東京女子医大、広島大学、信州大学など5大学と、デンソー、日立製作所など国内企業11社による“オールジャパン”体制で、2014年から5年間にわたって研究開発が進められてきた。

 これまでに、「ベーシックSCOT」と「スタンダードSCOT」と呼ぶモデルが開発されてきたが、今回、東京女子医大病院に設置されたのは「ハイパーSCOT」と呼ぶ最上位モデルである。まずは簡単に、これらのモデルの違いを見ていこう。

 ベーシックSCOTは、MRIを中心とした医療機器の情報を統合可能な形にパッケージ化したモデル。2016年6月に広島大学病院に設置され、悪性脳腫瘍やてんかんなどの脳外科や、骨腫瘍など整形外科領域で40床例以上の臨床研究が行われている。既に国内4施設に導入され、海外展開も始まっている。


スタンダードSCOTは、手術室のほぼすべての機器をネットワーク化したモデル。2018年7月に信州大学医学部附属病院に設置され、これまでに臨床研究約10症例を施行。今後、さらに臨床研究を積み重ね、2020年に販売開始を予定している。

 そして今回のハイパーSCOTは、スタンダードSCOTをベースに新規開発のロボットベッドやAIによる手術ナビゲーションの実装を計画しているモデルである。東京女子医大病院では、2019年2月28日に脳神経外科に関する臨床研究を開始。情報統合による手術の効率性・安全性などを実証していく。


ハイパーSCOTでは、AIによる手術ナビゲーションを実装することで、AIが術者の意思決定を支援することが可能になる。村垣氏は、「例えば、(脳腫瘍摘出術の最終局面において)機能を温存するのか、生存率改善のためにさらなる摘出を行うのかジレンマが生じたとき、AIが3つ程度のオプションを提示してくれる」と説明する。AMEDの別のプロジェクトでは、摘出率と機能予測のAIアプリケーション開発が進められているという。


国内外31社の46機器がつながる


 スマート治療室「SCOT」は、海外展開を強く意識している点も大きな特徴だ。「世界的な普及を目指し、まずは東南アジアを皮切りに、米国、中東、ヨーロッパへと販売地域を拡大していく」と、国内外へのスマート治療室の販売・施工を担当する日立製作所 外科治療ソリューション本部 本部長の中西彰氏は語る。今回のハイパーSCOTについては、「スマート治療室の新たな可能性、有用性を示す重要な牽引研究と考えている。東京女子医大病院で臨床研究が開始されたことは、事業化に向けて大きな弾みになる」(同氏)とした。

 なお、手術室内のさまざまな機器から得られる情報をリアルタイムに統合するために重要な役割を担っているのが、「OPeLiNK」と呼ばれるミドルウエアである。国際標準ミドルウエア「ORiN」をコア技術として、デンソーが中心となって開発した。現在、国内外31社の46機器をつなげる状態にある。「集積した情報による優れた医療技術を世界に向けて配信することで、世界の医療水準の向上につながるのではないか」(デンソー メディカル事業室 室長の奥田英樹氏)。

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